2019年09月01日
a nu (広尾)SHOHEI SHIMONO料理というカテゴリー
先日リニューアルオープンした広尾の『a nu』は、SHOHEI SHIMONO とシェフの名を背負ったカウンターガストロに。
何故、カウンターフレンチと書かないかというと、フレンチの枠を超えて自由すぎるから(笑)

フランス料理の技術を使いながらも冷製パスタやアヒージョ、鰻にオムライスまでが組み込まれたコースは、
既存の料理ジャンルの枠に収まりきらない日本ならではの下野ガストロノミー。

知ってるはずの味が、未体験の領域まで昇華されちゃう気持ちよさ。食文化の成熟した令和日本ならではのアプローチ。
でもね、押さえるところはちゃんとキメてるのがズルい。メインの本州鹿はフレンチらしい仕事なんだけど、ここは素直にめちゃめちゃ旨い。
島根本土鹿 内腿を使って、レア感を残した火入れが鹿らしい個性をしっかり立たせている。そこにビバーチ ペーストやウィスキー、黒にんにくを使ったソースが憎らしいほどにフィットしてたのよ。

それなりに鹿は食べてきたけど、これまでで印象に残った鹿は久々。合わせるワインも間違いない。
そんな仕事のクオリティで出された茸のアヒージョは、ガーリック強めでも負けない素材の力強さ。

生ハムとキャビアの冷製カッペリーニ、これを全部混ぜていただくんだけど、まさか日本のフレンチでこんな体験ができるとは。
ブルーオマールをトムヤム麺の出汁にふんだんに使い、しかも中にゴロッと御本体が…。バンコクには相当通ったけど、こんな体験したことない!!
これにボルドー合わせるとかやばいっしょ、ワインのペアリングも自由度増していて堪らんのよ。
あれ、ステーキとかあったっけ???
あ、そうか石垣牛オムライスだもんね。こんな自由極まりない料理があっていいんだ???

石垣牛のサーロインがふんだんに刻まれてる上に、シェフが更に削りで仕上げを。
そんな完成形がこちらのオムライス。
問答無用に美味しいのはわかるけど、これにピーマンの子供みたいなガルニが実にいいアクセント。旨味の暴走をいい意味で抑えてくれているのよ。

カウンターの脇には、こんなテーブルもあるので用途に応じて使い分けも。

シェフの遊びの奇跡の見える料理たち。これで、ワクワクしない筈がないでしょ、

そう、遊びって投資なんです。多くの日本人がそれを忘れてないかな??
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さて、前回のリニュアール直前の訪問から、はや2ヶ月。新生「ア・ニュ」へとやってきました。入口のサインもすっきりとした仕上がりに。
店内に入ると、これまでの名残はワインセラーくらいで、ガラッと雰囲気が変わっています。
でかい木のオブジェが目立ってますな。

下野シェフの前のポールポジションいただきました。
メニュー構成はこんな感じ。

メニューを眺めてからカウンターを改めて見回すと今夜の素材たちが。
これは鹿肉だね、綺麗な赤。

今までは品良く出されていたブリオッシュがワイルドに。
食べきれなかった分はお土産に。
金目鯛のコンソメは味噌も濃厚。スープ単体としても当然成立してるんだけど、なんだろう、ブリオッシュにもこんなに合うなんてね。
これが「芽蓮根」、食感と甘さが魅力の新潟の芽蓮根にハーブを飾りつつキノコのソースで。これは一口でいかないと諸々溢れ出すので要注意(笑)。むしろまりえが一口で食べてて驚いた。
茸アヒージョ、パセリとガーリックでシンプルに。強めのガーリックでも負けない茸の強さよ、でもパンと合うとこは、いかにもアヒージョ。
これをね、ミネラル感あるドイツのリースリングで合わせてくるなんてヤルじゃない! スキッとしたリースリングは全然好きじゃないので、こういうの待ってました!!

生ハムとキャビアの冷製カッペリーニ。さすがフレンチの技で作るパスタですな。キャビアに桃のエッソンスがこんなにも合うとは…。
ワインはナチュール系だったと記憶している。

どんな合い方してたかは忘れたけど、とにかく楽しかったし、ひとつもハズレなかったというのは間違いない。

鰻 ヒレ山椒ソース。
愛知の鰻は、皮面をグレープシードオイルで香ばしく仕上げ、タレにはフォアグラを使ってフレンチらしさを忍ばせている。
ヒレ山椒は沖縄の方で採れるもので、木の芽っぽいニュアンスも。

皆月さんの昔のペアリングって、THE王道という印象だったけど、料理の遊びが増し増しな分、ワインの振り幅も広くなっててメチャ嬉しい。
さて、続いてはいわゆるメインとなる鹿肉。
この歳になると、メインの時に「腹一杯で完食苦しいんですけど…。」という惨劇がしばしば散見されるわけなんですが、むしろ腹減ってる状態で向かい合えるという幸せ。

Thierry Allemandというローヌのヴァン・ナチュールの造り手。Cornas 'Les Chaillot' 2014年は鹿の魅力を引き出しまくり。単体よりも鹿と合わせたときが真価を発揮。

ブルーオマールのトムヤム麺、オムライスと両方攻めることに。
なんせ入店時、オマールブルーが動いているのに気づいちゃってたしね。
それに、こんな食材でトムヤムクンを作るとか未体験だから、タイ好きとしては避けられるはずのない選択肢。
現地でも色んなトムヤムクン食べてるけど、納得のガストロ的なアプローチ。海老のエキスの濃厚さと辛さのバランス感、着地点の品格がソレ。
スープだけでも相当感動的な味で、バンコクに行かなくてもトムヤムクンの頂点の味に会えるというのは嬉しいんだけど、そこにレア感残したオマーブルーの身が入ってたりしちゃうと完全初体験ゾーン。
え、これにボルドー合わせるの??? 格付けのないエリアのワインだけど、実力あるシャトーゆえ、ポタンシャルは高い。どこにピンを合わせるのかと思ったら海老でしたね。そこで繋いでくるとは。
ここいらで、結構お腹は膨れてきますが、9分目と言ったところ。
石垣牛のサーロインは、だいぶ前にカットされていて
焼き上がったもののカットから料理が始まります。
生胡椒とか
こだわりのお米とか
トリュフとか
赤ちゃんピーマンが、続々と登城してきます。
ざくざくと大胆にキューブ状にカットされた石垣牛が
オムライスの上に無造作に並びます。
生胡椒をおもむろにふりかけてから
木の芽のような刺激系ハーブを
そのうえにトリュフを削って蓋をして完成。
食べるときは、それをふんだんに混ぜていただきます。
ここで、はじめてモレ・サン・ドニが降臨。
美味しいという枠を超えて、素直に興奮するパンチある仕事。

あ、こっそり名前が掘ってあった。
食後はシンプルにキャラメルアイス。

パンチが足りないときは、この極旨のナッツを追い齧り。
食後にBARコーナーを案内してもらって、ここは毎月来たいなと。

もう少しスケジュールゆるくして、都内で月に自由に動ける夜を週一くらいにしてみたい。アポイント自体はやりたいことばかりだけど、もうちょい自由度高めに生きたいなと。


ま、やるべきことがあるってだけで幸せではあるんですが。
遠くない未来に再訪問しますね、まずはBARで男子会から。